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農業DXの成功事例から学ぶ!5つの成功要因と自社へ応用するステップ

 

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農業DXの成功要因と事例を活用した応用のステップ

農業DXの成功要因と事例を活用した応用のステップ

農業DXを成功させるためには、他社の事例から成功要因を学び、自社の規模や作物に合わせて応用することが不可欠です。

本記事では、業務効率化や収益アップを実現した農業DXの成功要因や、異業種参入による新しいビジネスモデルについて解説します。

近年、担い手不足や気候変動といった課題の解決策として、デジタル技術を活用した農業DXへの注目が高まっています。しかし、「必要性は感じているが、具体的なイメージが湧かない」「自社でどう戦略を構想すればよいかわからない」と悩む経営層も少なくありません。

他社の取り組みをそのまま取り入れるのではなく、なぜ成功したのかという背景を理解し、自社の現場課題と照らし合わせて具体的なステップに落とし込むことが重要です。本記事を通じて技術応用のポイントを把握し、持続可能な農業経営の実現にお役立てください。

スマートアグリコンサルタンツ合同会社|代表プロフィール
 

農業DXとは、デジタル技術を導入することだけではなく、データを活用して農作業、組織、販売、経営判断の仕組みを変革する取組です。

スマート農業がロボット農機、ドローン、センサー、AIなどの技術活用を指すことが多いのに対し、農業DXでは、技術を使って業務の流れや役割分担、意思決定、ビジネスモデルまで見直すことが重要になります。

本記事を解説するのは、農林水産省でスマート農業の推進を担当し、農業法人の現場、ICTサービス開発、自治体・企業の農業DX支援に携わってきた、スマートアグリコンサルタンツ合同会社代表・渡邊智之です。「農業とITの翻訳者」として、事例の表面的な模倣ではなく、経営課題に合わせて成功要因を応用する方法を解説します。

執筆者:渡邊智之

スマートアグリコンサルタンツ合同会社代表/CEO

農林水産省でスマート農業推進を担当。農業法人の現場、ICTサービス開発、自治体・企業支援に携わる。



農業法人の現場で実践された農業DXの代表事例
 

農業DXの事例には、ロボット農機やAIなどの先端技術を導入したものだけでなく、日々の作業記録を共有したり、生産と販売の情報をつないだりすることで、農業経営の仕組みそのものを変えた取組があります。

 

重要なのは、導入した技術の新しさではありません。導入前にどのような課題があり、デジタル技術によって業務や従業員の行動がどのように変わり、経営判断にどう活用されたのかを見ることです。ここでは、農業法人の現場で実践された取組を中心に、農業DXの代表的な成功事例を紹介します。

草を持つ手とデジタルグラフ

●農業DXの代表的な成功事例
 

事例1.作業日誌のクラウド化による情報共有

宮崎県の農業法人・新福青果では、多数のほ場における作業内容を、ほ場ごとに分けた紙のノートへ記録していました。

従業員は農作業を終えて事務所へ戻った後、泥のついた手で、その日に誰が、どのほ場で、どのような作業を行ったのかを思い出しながら記入していました。特に農薬の散布履歴は、使用回数や量を正確に管理する必要があり、記録漏れや間違いは出荷にも影響する重要な情報です。

そこで、作業日誌をクラウド化し、従業員が作業記録を入力し、関係者が随時確認できる仕組みを整えました。

これにより、経営者や管理者だけでなく、現場の従業員も、作業の進捗、ほ場の状況、農薬の使用履歴などを共有できるようになりました。情報が特定の人や紙のノートの中だけに残らず、組織全体で利用できる経営資源へ変わったのです。

この事例の成功要因は、紙をデジタルへ置き換えたことだけではありません。作業記録を、管理者へ報告するための情報ではなく、現場全体で次の行動を考えるための情報として活用した点にあります。

事例2.生産情報と営業活動をつないだ需給調整

作業日誌のクラウド化によって、現在どのほ場で何が栽培され、いつ、どの程度出荷できる見込みなのかを、営業部門も把握しやすくなりました。

農業では、生産部門と販売部門の情報が十分に共有されていないと、想定以上に収穫できたものの販路が決まっていない、取引先と約束した数量が足りず、急きょ近隣から集めなければならないといった事態が起こります。

生産状況を営業部門と共有することで、出荷可能な時期や数量を踏まえた営業活動が可能になります。販売機会を逃しにくくなるだけでなく、余剰や不足が発生した際の突発的な対応も減らしやすくなります。

さらに、現場の従業員も生産状況や計画を確認できるようになり、上司からの指示を待つだけでなく、自分で状況を把握して行動する変化が生まれました。

この事例は、農業DXが単なる作業の効率化ではなく、生産、販売、組織の意思決定をつなぎ、経営全体を変える取組であることを示しています。

事例3.作業・資材データによるほ場別コストの可視化

農業経営では、売上や経費の総額は把握できていても、どの品目やほ場で、どの程度の利益が出ているのかを正確に把握できていない場合があります。

そこで、作業日誌に記録した作業時間に加え、種苗、肥料、農薬、資材、農業機械、人件費などの情報を整理し、品目やほ場ごとのコストを可視化する取組が行われました。

具体的には、従業員、ほ場、作物、作業、農薬、肥料、資材、農業機械などの情報をデータベース化します。誰がどのほ場で何時間作業したのか、どの資材をどの程度使用したのかを記録することで、従来のどんぶり勘定では見えにくかった生産コストを把握できるようになります。

ほ場別のコストが分かれば、収量や売上だけでなく、利益の観点から栽培方法や作付けを見直せます。また、作業時間が多くかかっている工程や、資材費が高くなっている原因を特定し、改善の優先順位を判断することも可能です。

この事例のポイントは、データを集めることが目的ではなく、採算性を把握し、次の経営判断に活用していることです。

事例4.環境データと作業記録を組み合わせた栽培改善

ほ場に気温、湿度、日射量などを計測するセンサーを設置し、環境データを蓄積する取組も、代表的な農業DXの事例です。

ただし、環境データをグラフで確認するだけでは、農業経営の改善にはつながりません。環境の変化と、作物の状態、実施した作業、病害虫の発生などを組み合わせて分析することが重要です。

例えば、水はけの悪いほ場では、降雨前に排水経路を整える必要があることや、降雨後に高温多湿の状態が続くと、病気や害虫が発生しやすくなる傾向などを把握できる場合があります。

これまで熟練者が経験や感覚によって判断していた内容を、環境データと作業記録をもとに整理することで、他の従業員にも共有しやすくなります。異常が起きてから対応するのではなく、発生する可能性を予測して事前に対策することにもつながります。

この事例は、農業DXが熟練者の知識を否定するものではなく、その判断の根拠をデータによって補い、組織全体で活用できる知識へ変える取組であることを示しています。

事例5.現場で使える入力方法への改善

●成功事例は技術ではなく変化を見る
 

農業DXでは、システムを導入したものの、現場で使われずに定着しないケースもあります。

作業日誌をデジタル化する取組でも、当初は事務所のパソコンから入力する仕組みを用意したものの、日々の農作業を終えた従業員にとって、改めてパソコンを操作して記録することは大きな負担となり、十分に利用されませんでした。

農業現場では、屋外の強い日差しで画面が見えにくい、軍手を外しても手が泥や水で汚れている、作業中に文字を入力する時間を取りにくいといった、事務所とは異なる条件があります。

 

そこで、現場での使い方を確認しながら、スマートフォンや音声入力などを活用し、入力の負担を減らす方法が検討されました。

この事例から分かるのは、システムの機能が優れているだけでは農業DXは成功しないということです。実際に使う従業員と一緒に試し、入力方法や運用ルールを改善しながら、現場に合った仕組みへ調整することが欠かせません。

これらの農業DX事例に共通しているのは、高額な機械や最新のAIを導入したことではありません。

作業記録を共有することで、従業員の行動が変わったこと、生産情報と営業活動がつながったこと、コストを可視化して経営判断へ活用したこと、環境データと熟練者の知識を組み合わせたことなど、業務や組織の仕組みが変化しています。

他社の事例を参考にする際は、「どの製品を導入したのか」だけを見るのではなく、「導入前にどのような課題があったのか」「業務や役割をどのように変えたのか」「取得したデータを誰がどのように使ったのか」を確認することが重要です。

成功した事例の技術をそのまま模倣するのではなく、成功につながった考え方や運用方法を自社の経営規模、作物、ほ場条件、人員体制に合わせて応用することが、農業DXを実現する第一歩になります。

農業DXの事例から分かる5つの成功要因
 

農業DXで成果を上げている事例を見ると、単に高性能な機械や最新のシステムを導入しただけではないことが分かります。


導入前に経営ビジョンや現場課題を整理し、現在の作業状況を数値で把握したうえで、現場が無理なく使える仕組みを設計しています。また、小規模な実証で効果を確認し、運用方法を改善しながら段階的に広げていることも共通点です。

ここでは、農業DXの成功事例から分かる5つの成功要因を解説します。

●農業DXの成功事例から分かる5つの成功要因
 

1.経営ビジョンと導入目的が明確である

農業DXを成功させるためには、最初に「5年後、10年後にどのような農業経営を実現したいのか」を明確にすることが重要です。

例えば、労働力不足に対応しながら経営規模を拡大したいのか、品質や収量を安定させたいのか、熟練者の技術を次世代へ継承したいのか、販売や出荷まで含めた業務を効率化したいのかによって、必要となる取組は異なります。

成功している事例では、機械やシステムを導入すること自体を目的にせず、経営ビジョンを実現するために解決すべき課題を整理し、その手段としてデジタル技術を選んでいます。

「他社が導入しているから」「補助対象だから」「高性能だから」といった理由だけで技術を選ぶと、自社の経営規模や作業方法に合わず、十分に活用されない可能性があります。自社にとって何を改善するためのDXなのかを、導入前に具体化することが成功の第一歩です。

2.現在の作業と数値を導入前に把握している

農業DXの効果を確認するためには、導入前の作業状況を把握しておく必要があります。

作業時間、人員、移動距離、資材費、燃料費、収量、品質、廃棄量などの現状が分からなければ、システムを導入した後に、どの程度の改善効果があったのかを判断できません。

成功している事例では、現在の作業工程を洗い出し、誰が、どの作業に、どれだけの時間を使っているのかを整理しています。そのうえで、「作業時間を何時間削減する」「入力時間を半分にする」「収量のばらつきを小さくする」など、導入効果を測る数値目標を設定しています。

最初から完璧なデータを集める必要はありません。まずは改善したい作業について、時間、人数、費用、回数などを計測し、導入前の基準となる数値を持つことが重要です。

3.現場の入力負荷を最小限にしている

農業DXでは、作業記録や生育状況などのデータを蓄積することが重要ですが、入力作業が現場の負担になると、システムは次第に使われなくなります。

成功している事例では、取得するデータを、実際に現場改善や経営判断に使うものへ絞り込んでいます。また、気温、湿度、位置情報、機械の稼働時間など、センサーや農機から自動取得できるデータについては、可能な限り手入力を減らしています。

紙の日報、表計算ソフト、営農管理システムなどへ同じ内容を繰り返し入力する仕組みも、現場の負担を増やします。新しいシステムを導入する際には、追加する作業だけでなく、廃止できる記録や入力作業も整理することが必要です。

機能の多さではなく、農作業の流れの中で無理なく使い続けられるかを基準に、入力方法や画面、運用手順を設計することが、現場定着につながります。

4.担当者とデータ活用のルールが決まっている

データを収集しても、誰も確認しなければ経営改善にはつながりません。

成功している事例では、「誰が入力するのか」「誰がデータを確認するのか」「どの数値が変化した場合に、誰が判断するのか」といった役割分担が明確になっています。

例えば、現場の従業員が作業記録を入力し、管理者が週ごとに進捗や作業時間を確認し、経営者が月ごとに収量やコストを確認するといった運用ルールです。環境データについても、一定の数値を超えた場合に、誰へ連絡し、どのような作業を行うのかを決めておく必要があります。

また、特定の担当者だけが操作方法やデータの見方を理解している状態では、その人が不在になった際に運用が止まるおそれがあります。複数の従業員が基本的な操作を行えるようにし、マニュアルや確認手順を共有することも重要です。

データを集めることではなく、データを見て次の行動を決める仕組みをつくることが、農業DXの目的です。

5.小規模に試し、効果を検証してから広げている

農業DXでは、最初からすべてのほ場や作業工程へ大規模に導入するよりも、一部のほ場や特定の作業で小規模に試す方が、失敗のリスクを抑えられます。

成功している事例では、実証前に、作業時間、コスト、収量、品質、入力負荷などの評価指標を決めています。実証後に導入前の数値と比較し、期待した効果が得られたか、現場で無理なく使えたかを確認しています。

十分な効果が得られなかった場合も、技術そのものが適していなかったのか、入力方法や担当者、対象とした作業工程に問題があったのかを検証することが重要です。運用方法を改善して再度試すことで、現場に合った仕組みへ近づけられます。

効果を確認できた場合は、対象となるほ場や作業を段階的に広げます。一方、自社の課題や経営規模に合わない場合は、導入を見送ることも重要な経営判断です。

●成功の基準は技術の導入ではなく経営の変化
 

農業DXの成果は、機械やシステムを導入したことではなく、導入によって現場や経営がどのように変わったかで判断します。

作業時間が短くなった、従業員が自ら情報を確認して動くようになった、生産と販売の情報が共有された、ほ場別の採算を把握できるようになったなど、業務や組織、経営判断の変化を確認することが重要です。

経営ビジョンと目的を明確にし、導入前の数値を把握したうえで、入力負荷を抑え、運用ルールを整え、小規模な実証と効果検証を繰り返すことが、農業DXを成功へ導く共通条件です。

異業種参入による農業DXの事例と成功条件
 

IT、製造、物流、小売、エネルギーなどの異業種企業が、自社の技術や人材、顧客基盤を活かして農業分野へ参入する動きがあります。

 

異業種企業は、データ分析、生産管理、自動化、品質管理、物流、販売など、既存の農業経営とは異なる強みを持っています。こうした強みを農業現場の課題と組み合わせることで、生産性の向上や新しい販売方法、農業支援サービスなどにつながる可能性があります。

温室でデータを記録する農家

一方、優れた技術や資金があっても、農業特有の作業、天候リスク、収穫時期、品質のばらつき、販路などを十分に理解せずに参入すると、期待した成果を得られない場合があります。

 

異業種参入を成功させるには、農業を単なる技術の実証場所として捉えず、持続可能な事業として設計することが重要です。

●農業DXの成功事例
 

事例1.製造業の生産管理を農業へ応用する

製造業には、作業工程の標準化、品質管理、原価管理、設備保全などのノウハウがあります。これらを農業へ応用し、作業内容や生育状況、使用した資材、収穫量などをデータで管理する取組があります。

例えば、作業工程ごとの時間や投入資材を記録し、品目やほ場ごとの生産コストを把握できれば、どの作業に負担が集中しているのか、どの品目やほ場の採算性が低いのかを確認できます。

また、施設園芸などでは、温度、湿度、日射量、二酸化炭素濃度などの環境データを収集し、栽培管理へ活用する方法があります。製造業で培った品質管理の考え方を取り入れることで、経験だけに頼らず、品質や収量のばらつきを小さくする取組につなげられます。

ただし、農業では同じ作業や環境条件でも、天候、品種、生育段階などによって結果が変わります。工業製品の生産方法をそのまま持ち込むのではなく、農業者や栽培の専門家と連携し、現場で検証しながら管理方法を調整することが必要です。

事例2.IT企業が農業者を支援するサービスを構築する

IT企業が自ら農産物を生産するだけでなく、農業者の業務を支援するサービスを提供する事例もあります。

例えば、作業記録、生育情報、気象情報、受発注、在庫などを管理するクラウドサービスを提供し、農業者が現在の状況を把握しやすくする取組です。複数の情報をつなぐことで、収穫時期や出荷量の予測、作業計画の作成、資材発注の効率化などにつなげられる可能性があります。

IT企業の強みは、データを収集・分析し、多くの利用者が使える仕組みとして提供できる点です。一方で、農業現場では、屋外で操作しにくい、入力する時間を確保できない、必要な項目が作物によって異なるといった問題があります。

システムの機能を増やすだけでなく、農業者がどの場面で、何のために利用するのかを確認し、入力負荷を最小限にすることが重要です。現場で使われなければデータは蓄積されず、サービスとしての価値も生まれません。

事例3.物流・小売企業が生産と販売をつなぐ

物流企業や小売企業は、配送網、店舗、顧客データ、販売実績などの資産を持っています。これらを農業生産と組み合わせ、生産から出荷、販売までをつなぐ農業DXも考えられます。

例えば、農業者から出荷予定量や収穫時期の情報を集め、小売店や飲食店からの需要情報と照合することで、受発注や配送を効率化する取組です。複数の農業者の商品をまとめて配送すれば、小口配送の負担を抑えられる場合もあります。

また、販売実績や消費者の反応を生産側へ共有することで、どの品目を、いつ、どの程度生産するかを判断しやすくなります。生産と販売を別々に考えるのではなく、需要を踏まえて生産計画を立てる仕組みをつくることが、農業DXにつながります。

ただし、農産物は天候などの影響によって、予定した数量を必ず出荷できるとは限りません。欠品や余剰が発生した場合の対応、品質基準、価格決定、返品などのルールを、農業者と販売側で事前に整理しておく必要があります。

事例4.農業支援サービスとして技術を提供する

異業種企業が農業機械やシステムを販売するだけでなく、作業そのものを請け負う農業支援サービスとして参入する方法もあります。

例えば、ドローンによる農薬散布、センシング、収穫作業、農機の共同利用、データ分析などをサービスとして提供するモデルです。農業者は高額な機械を自ら購入せず、必要な作業だけを依頼できるため、導入費用や保守負担を抑えられます。

サービス事業者にとっても、複数の農業者に機器を活用することで、設備の稼働率を高められる可能性があります。

一方、農作業には適期があり、同じ地域の農業者から短期間に依頼が集中することがあります。繁忙期に必要な人員や機器を確保できるか、天候による日程変更へ対応できるか、農地ごとの条件を把握できるかなどを事前に検討する必要があります。

●農業DXの成功条件
 

成功条件1.自社の強みと農業課題を結びつける

異業種参入では、農業分野で流行している技術を導入するのではなく、自社が持つ強みを明確にすることが重要です。

IT企業であればデータ分析やシステム開発、製造業であれば工程管理や品質管理、物流企業であれば配送網、小売企業であれば店舗や顧客接点などが強みになります。

その強みが、農業者のどの課題を解決できるのかを検証します。農業現場で必要とされていない機能や、すでに別の方法で解決されている課題へ投資しても、持続的な事業にはなりません。

「自社の技術を農業で使えないか」だけでなく、「農業者が何に困り、誰がお金を支払うのか」という順番で考えることが必要です。

成功条件2.生産設備より先に顧客と販路を確認する

異業種から農業へ参入する際は、農地や施設、栽培技術の検討に意識が向きやすくなります。しかし、農産物を生産できても、販売先や販売価格が決まっていなければ事業として継続できません。

誰に、どのような農産物やサービスを、いくらで提供するのかを明確にし、見込まれる売上と生産・運営コストを比較する必要があります。

農産物の販売を行う場合は、卸売市場、小売店、飲食店、加工事業者、EC、直売など、販路によって必要な数量、品質、荷姿、納品頻度が異なります。顧客が求める条件を確認したうえで、生産方法や導入技術を設計することが重要です。

技術を導入すれば売れるのではなく、売れる仕組みを実現するために技術を使うという考え方が求められます。

成功条件3.農業現場を理解する人材とチームをつくる

農業では、作物、地域、季節、天候、ほ場条件によって、必要な作業や判断が変わります。技術や事業企画の担当者だけでは、現場で生じる問題を十分に把握できない場合があります。

異業種企業が農業DXへ取り組む際は、農業者、農業法人、JA、普及指導機関、自治体、農機メーカー、IT事業者などと連携し、それぞれの知識を持ち寄ることが重要です。

ITの専門用語を農業者に説明し、農業現場の課題を技術者へ正確に伝える「農業とITの翻訳者」の役割も必要になります。

一方的に技術を提供する関係ではなく、現場で一緒に試し、問題があれば改善するチームをつくることで、農業者にとって使いやすく、事業者にとっても継続可能な仕組みへ近づけられます。

成功条件4.小規模実証で事業性を確認する

異業種企業が農業へ参入する場合、最初から大規模な設備投資を行うのではなく、小規模な実証によって技術面と事業面の両方を検証することが重要です。

実証では、技術が正常に動くかだけでなく、作業時間、必要な人員、入力負荷、保守費用、収量、品質、販売価格、顧客の反応などを確認します。

例えば、作業時間を削減できても、システムの利用料や保守費用が削減額を上回る場合があります。生産量が増えても、販売先が確保できなければ廃棄や値下げにつながる可能性があります。

実証前に評価指標を設定し、導入前後の数値を比較することで、技術の実用性と事業としての採算性を客観的に判断できます。

成功条件5.デジタル技術を業務変革につなげる

農業DXは、システムや機械を導入することではなく、それらを使って業務や経営の仕組みを変える取組です。

例えば、作業記録をデジタル化する場合も、紙の日報を画面へ置き換えるだけでは十分ではありません。記録した情報を誰が確認し、作業計画、原価管理、出荷判断、販売活動へどのように活用するかを決める必要があります。

新しい仕組みを追加するだけでなく、不要になった紙の記録や重複入力を廃止し、担当者や役割分担も見直します。導入後に現場の意見を集め、操作方法や入力項目を改善することも欠かせません。

技術の導入によって、作業、情報共有、意思決定、顧客への価値提供がどのように変わるのかまで設計することが、異業種参入を農業DXへつなげる条件です。

●農業を技術の実証場所にしない
 

異業種企業が農業分野へ参入することは、農業が抱える課題を解決し、新しい価値を生み出す可能性があります。

一方で、自社の技術を試すことだけが目的になると、農業者に負担をかけ、実証終了後に使われない仕組みが残るおそれがあります。

異業種参入を成功させるには、自社の強み、農業現場の課題、顧客のニーズ、費用対効果、運用体制を一体として考える必要があります。さらに、小規模な実証によって価値を数字で確認し、現場と一緒に改善しながら事業を育てることが重要です。

農業者、異業種企業、自治体、JA、技術事業者などが、それぞれの強みを持ち寄るチームをつくることで、単発の実証ではなく、地域や農業経営に定着する農業DXへつなげられます。

農業DXは、農業者や企業が単独で進めるものではありません。農業者、IT企業、農機メーカー、自治体、JA、研究機関などが共通の目的と役割を共有し、それぞれの強みを持ち寄る「チーム戦」として進めることが、現場への定着と継続的な成果につながります。

DXの事例を自社へ応用する5つのステップ
 

農業DXの成功事例を知ることは、自社の取組を考えるうえで有効です。しかし、成功した農業法人と自社では、作物、経営規模、ほ場条件、人員体制、販路、従業員の経験などが異なります。

他社で成果が出た機械やシステムをそのまま導入しても、自社の課題や運用体制に合わなければ、期待した効果は得られません。

重要なのは、事例で使われた技術だけを見るのではなく、「なぜその取組が必要だったのか」「どのような業務や役割を変えたのか」「どのように効果を確認したのか」という成功要因を読み取り、自社の条件に合わせて応用することです。

ここでは、農業DXの事例を自社へ応用するための5つのステップを解説します。

●農業DX事例を自社へ応用するための5つのステップ
 

1.経営ビジョンと解決したい課題を明確にする

最初に、「5年後、10年後にどのような農業経営を実現したいのか」を整理します。

例えば、労働力不足に対応しながら経営規模を拡大したいのか、品質や収量を安定させたいのか、熟練者の技術を次世代へ継承したいのか、生産と販売の情報をつないで収益性を高めたいのかによって、参考にすべき事例は異なります。

そのうえで、現在の作業工程や経営状況を確認し、解決したい課題を具体化します。

「収穫期の人手が足りない」「作業記録が紙に分散している」「ほ場ごとの原価が分からない」「出荷可能量を営業部門と共有できていない」など、現場で起きている問題をできるだけ具体的に整理しましょう。

技術や製品を選ぶ前に、自社が何を変えたいのかを明確にすることが、事例を正しく応用するための出発点です。

2.成功事例と自社の前提条件を比較する

次に、参考にする成功事例と自社の条件を比較します。

確認したいのは、作物、栽培方法、経営規模、ほ場の広さや分散状況、従業員数、通信環境、販売方法、導入前の課題などです。

例えば、大規模な土地利用型農業で効果を上げたロボット農機が、小規模で分散したほ場でも同じ効果を発揮するとは限りません。施設園芸で活用されている環境制御の仕組みも、設備、栽培技術、販売単価などの条件が異なれば、同じ採算性にはなりません。

事例を読む際は、成果だけでなく、その成果が生まれた前提条件を確認することが重要です。

自社と異なる点を明確にすることで、そのまま導入できる部分と、調整が必要な部分を判断しやすくなります。

3.自社へ応用できる成功要因を抽出する

成功事例から取り入れるべきなのは、使用された製品や機械だけではありません。

例えば、作業日誌をクラウド化した事例であれば、導入したシステムそのものではなく、「作業記録を関係者が共有した」「生産状況を営業活動へ活用した」「従業員が自ら情報を確認して行動できるようにした」といった仕組みが成功要因です。

環境データを活用した事例であれば、センサーの種類だけでなく、「環境データと作業記録を組み合わせた」「異常が発生する前に判断した」「熟練者の知識を他の従業員と共有した」といった運用方法に注目します。

事例から、次のような成功要因を抽出します。

  • 導入目的が明確だった

  • 導入前の作業や数値を把握していた

  • 現場の入力負荷を抑えていた

  • 担当者と役割分担が決まっていた

  • 取得したデータを次の行動へつなげていた

  • 小規模に試してから対象を広げていた

 

これらのうち、自社の課題解決に活かせるものを選び、自社向けの導入案へ置き換えます。

4.小規模な実証と数値目標を設定する

自社に応用できそうな取組が見つかったら、最初から大規模に導入せず、一部のほ場や作業工程で小規模に試します。

例えば、すべての作業記録を一度にデジタル化するのではなく、特定の品目や一部の従業員から始める方法があります。環境センサーも、すべてのほ場へ設置する前に、課題が生じやすい場所へ限定して効果を確認します。

実証前には、導入効果を測る数値目標を設定します。

作業時間、入力時間、人件費、移動距離、資材使用量、収量、品質、廃棄量、販売単価など、解決したい課題に応じた指標を決めます。

例えば、「作業記録にかかる時間を30%削減する」「水管理の巡回回数を減らす」「出荷見込みと実績の差を小さくする」など、導入前後で比較できる目標を設定します。

数値だけでなく、従業員が無理なく操作できたか、入力項目が多すぎなかったか、通信が安定していたかといった現場の評価も確認することが重要です。

5.効果を検証し、運用を改善しながら広げる

実証後は、当初設定した目標に対してどの程度の効果が得られたかを確認します。

期待した効果が得られた場合でも、現場から「入力に時間がかかる」「確認する画面が多い」「特定の担当者しか操作できない」といった意見が出ることがあります。こうした声をもとに、入力項目、操作方法、役割分担、確認するタイミングなどを見直します。

十分な効果が得られなかった場合は、技術そのものが自社に適していなかったのか、対象とした作業や運用方法に問題があったのかを検証します。

他社の事例で成果が出ていても、自社の条件に合わない場合は、導入範囲を縮小したり、別の方法へ変更したりする判断も必要です。

効果と運用の両面で問題がないことを確認できたら、対象となるほ場、品目、従業員、作業工程を段階的に広げます。

一度に全社展開するのではなく、実践、検証、改善を繰り返しながら広げることで、現場への負担と導入リスクを抑えられます。

●事例の技術ではなく成功の仕組みを応用する
 

農業DXの事例を自社へ応用する際は、成功事例で使われた機械やシステムを導入することが目的ではありません。

導入目的を明確にしたこと、現場の作業を可視化したこと、入力負荷を抑えたこと、データを経営判断へ活用したこと、小規模に試して改善を重ねたことなど、成果につながった仕組みを自社へ取り入れることが重要です。

他社の事例と自社の条件を比較し、応用できる成功要因を抽出したうえで、小規模な実証と効果検証を行うことで、自社に合った農業DXへ発展させることができます。

農業DXの事例を参考にする際の注意点
 

農業DXの成功事例は、自社の取組を考えるうえで有効な参考材料です。しかし、事例で紹介されている機械やシステムをそのまま導入すれば、同じ成果が得られるとは限りません。

農業では、作物、栽培方法、経営規模、ほ場条件、従業員数、販売先、通信環境などが経営ごとに異なります。また、記事や導入事例では成果が強調される一方、導入前の課題、運用上の苦労、追加費用、成果が出るまでの期間などが詳しく示されていない場合もあります。

成功事例を参考にする際は、結果だけでなく、その成果が生まれた前提条件や運用方法まで確認することが重要です。

●事例と自社では前提条件が異なる
 

最初に確認したいのは、成功事例と自社の条件がどの程度似ているかという点です。

同じ作物を栽培していても、ほ場の広さや分散状況、気候、作型、従業員の経験、販売方法などが異なれば、必要な技術や期待できる効果も変わります。

例えば、大規模でまとまったほ場に適した自動走行農機が、小規模で分散したほ場でも同じ効果を発揮するとは限りません。施設園芸で成果が出た環境制御システムも、設備条件や販売単価が異なれば、同じ投資回収は期待できません。

事例を見る際は、「何を導入したか」だけでなく、導入した農業法人の規模、作物、人員、地域、販路、導入前の課題などを確認しましょう。

●成果の数字だけで判断しない
 

農業DXの事例では、「作業時間を削減した」「収量が増えた」「売上が向上した」といった成果が紹介されることがあります。

しかし、その数字がどの期間を比較したものなのか、天候や作付面積の変化を含んでいるのか、システム利用料や保守費用を差し引いているのかによって、意味は変わります。

作業時間が減っていても、入力作業やデータ確認の時間が増えている場合があります。収量が増えても、追加の資材費や光熱費、販売コストが増えていれば、利益が増えているとは限りません。

事例の成果を確認する際は、作業時間、収量、売上だけでなく、人件費、維持費、通信費、保守費用、教育にかかった時間なども含めて見ることが重要です。

●補助金を利用できても採算性を確認する
 

農業DXでは、機械やシステムの導入に補助事業を利用できる場合があります。しかし、補助金を利用できることと、導入後に採算が取れることは別の問題です。

補助対象になるのは導入時の費用の一部であり、通信費、クラウド利用料、保守費用、消耗品、修理費、更新費用などは導入後も継続して発生します。

また、補助事業の対象になっている機器であっても、自社の経営課題を解決できるとは限りません。

「補助金が使えるから導入する」のではなく、補助金を使わない場合でも、経営改善につながる価値があるかを検討することが大切です。

●現場の入力負荷と作業変更を見落とさない
 

システム導入によって新たな入力作業や確認作業が増えると、現場の負担が大きくなる場合があります。

成功事例では、システムの機能や取得できるデータが紹介される一方、従業員がいつ入力しているのか、操作にどの程度の時間がかかるのか、紙の記録を廃止できたのかなど、運用の詳細まで示されていないことがあります。

導入前には、誰が、どの場面で、何を入力するのかを確認します。また、新しいシステムを追加するだけでなく、従来の紙の日報や表計算ソフトなど、廃止できる作業も整理する必要があります。

センサーや農機から自動取得できる情報は、できる限り手入力を減らし、現場で本当に必要な記録へ絞り込むことが定着につながります。

●特定の担当者だけに依存しない
 

農業DXの導入初期には、ICTに詳しい従業員や導入担当者へ、設定、データ入力、分析、事業者との連絡などが集中しやすくなります。

成功事例と同じシステムを導入しても、運用できる人材や役割分担が整っていなければ、担当者が不在になった際に利用できなくなるおそれがあります。

導入前に、誰が入力し、誰が確認し、誰がデータをもとに判断するのかを明確にしましょう。複数の従業員が基本操作を行えるようにし、操作方法だけでなく、記録する目的や異常時の対応も共有することが重要です。

外部の事業者へすべてを任せる場合も、社内に最低限の知識と判断基準を残しておく必要があります。

●事例で使われた製品だけを比較しない
 

成功事例を見ると、紹介されている製品やサービスに注目しがちです。しかし、成果につながった理由が製品の性能だけとは限りません。

導入前に課題を明確にしたこと、現場の従業員が検討に参加したこと、運用ルールを改善したこと、小規模に試したことなど、技術以外の要因が成果を左右している場合があります。

製品を比較する際は、機能と価格だけでなく、入力負荷、通信環境、既存システムとの連携、保守体制、データの出力方法、事業者変更のしやすさまで確認しましょう。

特定の製品を導入することではなく、自社の課題を解決できる仕組みをつくることが目的です。

●導入前後の効果を比較できる状態にする
 

導入効果を検証するためには、導入前の状態を記録しておく必要があります。

現在の作業時間、人員、資材費、収量、品質、廃棄量、入力時間などを把握していなければ、導入後に効果があったかを客観的に判断できません。

参考にした事例の数値をそのまま目標にするのではなく、自社の現状を基準に、「どの作業を、どの程度改善したいのか」を決めます。

実証前に評価指標を設定し、導入前後の数値と現場の意見を比較することで、技術の効果と運用上の課題を確認できます。

●自社に合わなければ導入しない判断も持つ
 

事例を調べるうちに、紹介されている技術を導入しなければ取り残されるように感じることがあります。

しかし、現状分析の結果、作業手順や人員配置の見直しで課題を解決できる場合もあります。高額な機械を購入するよりも、レンタル、共同利用、農業支援サービスを利用した方が合理的なケースもあります。

小規模な実証で十分な効果が得られない場合は、運用方法を見直すだけでなく、導入を見送ることも重要な経営判断です。

農業DXは、デジタル技術を増やすことが目的ではありません。経営課題を解決し、現場と経営をより良い状態へ変えることが目的です。

●成功事例は答えではなく検討材料として活用する
 

農業DXの成功事例は、自社が目指す方向や取組の選択肢を考えるための材料です。

事例の成果だけを見るのではなく、導入前の課題、前提条件、費用、運用方法、現場の変化、効果の検証方法まで確認することが重要です。

そのうえで、自社の経営ビジョンや現場条件に合う成功要因を抽出し、小規模な実証によって効果と運用負担を確かめます。

事例をそのまま模倣するのではなく、自社に必要な部分だけを取り入れ、実践と改善を繰り返すことが、持続的な農業DXにつながります。

農業DXの事例活用・導入支援ならスマートアグリコンサルタンツ合同会社へ
 

スマートアグリコンサルタンツ合同会社では、農業法人、農業関連企業、異業種から農業への参入を検討する企業、自治体、JA、農業関係団体などを対象に、農業DXの構想策定から導入後の効果検証まで一貫した支援を行っています。

農業DXは、デジタル技術やシステムを導入すること自体が目的ではありません。自社が目指す農業経営の姿を明確にし、現場の課題を整理したうえで、業務、組織、データ活用、経営判断の仕組みを変えていく取組です。

当社では、特定の機械、システム、メーカーの導入を前提とせず、まずは「5年後、10年後にどのような農業経営を実現したいのか」「現在のどの課題を優先して解決すべきか」をお客様と一緒に整理します。

●経営ビジョンと現場課題を整理する
 

最初に、経営者や現場の従業員へのヒアリングを行い、現在の作業工程、人員体制、コスト、データ管理、販売方法などを確認します。

「人手不足に対応したい」「作業記録が分散している」「ほ場ごとの採算が分からない」「生産と販売の情報を共有できていない」「熟練者の技術を次世代へ継承したい」など、現場で起きている課題を具体化します。

そのうえで、経営への影響、緊急性、改善効果、実現可能性などを比較し、優先して取り組む課題を整理します。技術を選ぶ前に、何を変えるための農業DXなのかを明確にすることを重視しています。

●参考にする事例と自社の条件を比較する
 

農業DXの成功事例は有効な検討材料ですが、作物、経営規模、ほ場条件、人員、販売先などが異なれば、同じ技術を導入しても同じ成果が得られるとは限りません。

当社では、国内外の農業DXやスマート農業の事例から、自社の課題に参考となる取組を選定します。そのうえで、事例と自社の条件を比較し、そのまま応用できる部分と、調整が必要な部分を整理します。

事例で使われた製品だけを見るのではなく、導入目的、業務の変更、役割分担、データ活用の方法、小規模実証の進め方など、成果につながった要因を抽出し、自社に合った形へ置き換えます。

●技術やサービスを中立的に比較する
 

課題と導入目的が明確になった後に、機械、システム、クラウドサービス、農業支援サービスなどを比較します。

比較するのは、機能や導入価格だけではありません。自社の作物や経営規模に対応できるか、現場で無理なく操作できるか、入力作業が増えないか、通信環境に適しているか、既存システムと連携できるか、故障時の保守体制があるかなどを確認します。

高額な機械を購入するよりも、レンタル、共同利用、作業受託などの農業支援サービスを利用した方が合理的な場合もあります。また、作業手順や人員配置の見直しによって課題を解決できる場合は、技術を導入しない選択肢も含めて検討します。

「導入できるか」ではなく、「経営改善につながるか」を基準に判断します。

●費用対効果と事業性を検討する
 

農業DXの投資を判断する際には、機器やシステムの初期費用だけでなく、通信費、クラウド利用料、保守費用、更新費用、教育に必要な時間なども含めて検討する必要があります。

一方、導入によって削減できる作業時間や人件費、改善が期待できる収量、品質、歩留まり、販売単価などを整理し、導入前後の収支を試算します。

異業種から農業へ参入する場合は、生産技術や設備だけでなく、顧客、販路、販売価格、必要な生産量、物流体制なども含めて事業性を確認します。

補助事業を活用できる場合でも、補助金の有無だけで導入を判断せず、導入後も継続して運用できるかを検討します。

●小規模実証を設計する
 

技術の効果や現場での使いやすさを確認できない場合は、最初から大規模に導入せず、一部のほ場、品目、作業工程を対象とした小規模実証を設計します。

実証前に、作業時間、入力時間、人件費、資材使用量、収量、品質、販売単価などの評価指標を設定します。導入前の数値と実証後の数値を比較することで、効果を客観的に判断できる状態をつくります。

また、数値上の効果だけでなく、現場の従業員が無理なく使えたか、入力項目が多すぎなかったか、通信や保守に問題がなかったかなど、運用面も確認します。

期待した効果が得られなかった場合は、技術そのもの、対象とした作業、運用方法、役割分担などを振り返り、改善したうえで再度検証します。

●運用体制と人材育成を支援する
 

農業DXを現場へ定着させるためには、機械やシステムを導入するだけでなく、誰が入力し、誰がデータを確認し、誰が経営判断に活用するのかを明確にする必要があります。

当社では、経営者、現場の従業員、システム担当者など、それぞれの役割に合わせて、運用ルール、作業手順、確認方法、マニュアルなどを整理します。

また、特定の担当者だけに知識や業務が集中しないよう、複数の従業員が基本的な操作やデータの見方を理解できる人材育成も支援します。

ITの専門用語を農業現場へ分かりやすく伝え、現場の課題を技術事業者へ正確に伝える「農業とITの翻訳者」として、農業者、IT企業、農機メーカー、自治体、JAなどの関係者間の調整も行います。

●導入後も効果を検証し改善する
 

農業DXは、システムや機械を導入した時点で完了するものではありません。

導入後も、当初設定した目標に対して、作業時間、コスト、収量、品質、入力負荷、利用状況などがどのように変化したかを確認します。

十分に使われていない機能や重複している作業があれば、入力項目、役割分担、作業手順、データの確認方法などを見直します。効果が確認できた場合は、対象となるほ場、品目、作業工程を段階的に広げます。

導入して終わるのではなく、現場で使われ、データが次の行動や経営判断に活用されるまで伴走する「やり切るDX」を重視しています。

「何から検討すればよいか分からない」「参考にすべき事例を選びたい」「複数の技術やサービスを比較したい」「小規模な実証から始めたい」「導入済みのシステムが現場に定着していない」といった段階からご相談いただけます。



【Q&A】農業DXの事例についての解説
 

Q1.農業DXで成果を上げている事例の共通点は何ですか?
A.経営ビジョンと導入目的が明確で、導入前の作業時間やコストなどを把握している点です。また、現場の入力負荷を抑え、担当者とデータ活用のルールを決めたうえで、小規模な実証によって効果を確認しながら段階的に導入しています。最新技術を導入したことではなく、データを現場改善や経営判断へ活用する仕組みを整えていることが共通する成功要因です。

 

Q2.デジタル技術を用いた異業種からの農業参入にはどのような特徴がありますか?
A.IT企業のデータ分析、製造業の工程・品質管理、物流企業の配送網、小売企業の顧客接点など、自社が持つ強みを農業現場の課題と組み合わせる点が特徴です。農産物の生産だけでなく、作業支援サービス、生産・受発注・物流の連携、データを活用した経営支援など、さまざまな事業モデルが考えられます。ただし、技術や設備を先に決めるのではなく、顧客、販路、採算性、農業現場の運用条件を確認し、小規模な実証から始めることが重要です。

 

Q3.他社の事例を自社に取り入れる際のポイントは何ですか?
A.事例をそのまま模倣するのではなく、自社の課題や作物の種類に合わせて応用することです。一部のほ場などでスモールスタートによる検証を行い、運用ルールを改善しながら段階的に導入を進めることが定着への鍵となります。

 

Q4.農業DXとスマート農業は何が違いますか?
A.スマート農業は、ロボット農機、ドローン、センサー、AIなどの技術を農業へ活用する取組を指すことが多いのに対し、農業DXは、デジタル技術を使って業務、組織、データ活用、経営判断、販売などの仕組みそのものを変革する取組です。
例えば、作業記録をデジタル化するだけでは、スマート農業技術の導入にとどまる場合があります。記録したデータを生産計画、原価管理、出荷判断、販売活動へ活用し、役割分担や仕事の進め方まで変えることで、農業DXにつながります。
どちらも技術の導入自体が目的ではなく、農業経営の課題を解決し、生産性や収益性、持続可能性を高めるための手段として取り組むことが重要です。

 

Q5.農業DXの成功事例をそのまま自社へ導入してもよいですか?
A.成功事例をそのまま導入するのではなく、自社の条件に合わせて応用することが重要です。
農業では、作物、栽培方法、経営規模、ほ場条件、人員体制、通信環境、販路などが経営ごとに異なります。そのため、他社で成果を上げた機械やシステムを導入しても、同じ効果が得られるとは限りません。
事例を参考にする際は、使用された製品だけでなく、導入前の課題、現場で変更した業務、役割分担、データの活用方法、効果の検証方法などを確認しましょう。そのうえで、自社に応用できる成功要因を抽出し、小規模な実証によって効果と運用負担を確かめることが必要です。

 

Q6.農業DXの効果はどのような数字で測りますか?
A.解決したい経営課題に合わせて、導入前後を比較できる数値を設定します。
業務効率化を目的とする場合は、作業時間、人員、移動距離、入力時間、残業時間などが指標になります。生産改善を目的とする場合は、収量、品質、歩留まり、資材使用量、廃棄量などを確認します。
経営面では、人件費、資材費、燃料費、保守費用、販売単価、売上、利益などが考えられます。また、システムの利用率、入力漏れ、従業員が操作に要する時間など、現場への定着状況も重要な指標です。
導入後だけでなく、導入前の数値を把握しておくことで、費用対効果や実際の改善度を客観的に判断できます。

 

Q7.小規模な農業法人でも農業DXに取り組めますか?
A.小規模な農業法人でも、経営規模や課題に合った方法を選べば農業DXに取り組めます。
農業DXは、高額なロボット農機や大規模なシステムの導入だけを意味するものではありません。作業日誌の共有、受発注のデジタル化、環境センサーの設置、クラウドサービスの利用など、特定の課題に絞って小さく始める方法があります。
機器を購入せず、レンタル、共同利用、農薬散布などの農業支援サービスを活用する選択肢もあります。最初から経営全体を変えようとせず、負担の大きい作業や効果を測りやすい工程から試し、成果を確認しながら段階的に広げることが重要です。

 

Q8.異業種から農業へ参入する際の注意点は何ですか?
A.自社の技術や設備を農業へ持ち込むことから考えるのではなく、顧客、販路、農業現場の課題を先に確認することが重要です。
優れた技術や資金があっても、栽培方法、天候リスク、収穫時期、品質のばらつき、農作業の適期などを十分に理解していなければ、事業として継続できない可能性があります。
農産物を生産する場合は、誰に、何を、いくらで販売するのかを明確にし、販売価格、生産量、物流、設備費、運用費などを含めて採算性を検討します。また、農業者、栽培の専門家、自治体、JA、技術事業者などと連携し、小規模な実証で技術面と事業面の両方を確認することが必要です。
農業を自社技術の実証場所として捉えるのではなく、農業者や地域にどのような価値を提供できるかを考えることが、持続的な参入につながります。

 

Q9.導入する技術やシステムが決まっていなくても相談できますか?
A.はい。むしろ、製品やサービスを決める前の段階で相談することで、自社に合わない技術を選ぶリスクを抑えられます。
最初に、経営ビジョン、現場の作業工程、人員体制、コスト、データ管理、販路などを整理し、優先して解決すべき課題を明確にします。そのうえで、参考となる事例の選定、自社条件との比較、技術・サービスの比較、費用対効果の検討を行います。
必要に応じて、小規模実証の設計、評価指標の設定、運用体制の構築、人材育成、導入後の効果検証まで支援を受けることも可能です。
「何から始めればよいか分からない」「他社の成功事例を自社へ応用できるか知りたい」という構想段階から相談することが、農業DXの失敗を防ぐ第一歩になります。


スマート農業・農業DXや農業コンサルに関するコラム
 



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・農業分野における調査、研究、情報収集、分析及び情報提供並びにこれらに関する支援業務

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