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猛暑の農業と「きこりのジレンマ」──スマート農業は“斧を研ぐ時間”になれるか?

更新日:9月14日

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猛暑に挑む農家の現実 スマート農業の導入が進まない深層 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン) 上記Forbes JAPANの記事を読みながら、私は「きこりのジレンマ」という寓話を思い出しました。

切れ味の落ちた斧で木を切り続けるきこり。「斧を研げばいいのに」と言われても、「忙しくて研いでいる暇がない」と答える。結果、斧はますます切れなくなり、仕事は進まず、疲労だけが増していく──。

今の日本農業の姿は、この寓話と重なって見えてきます。

感想① 猛暑と人手不足は“鈍った斧”

記事にある通り、農家は猛暑や病害虫に苦しみ、人手不足や高齢化で「動きたくても動けない」状態に追い込まれています。これは単なる“労働力不足”ではなく、“労働力が機能不全に陥っている”現実です。

販路確保や経営の雑務に追われ、本来の生産活動に集中できない。結果的に質の低下や顧客離れにつながる。まさに「鈍った斧」で木を切り続ける状況にほかなりません。

感想② スマート農業=斧を研ぐこと

一方で、スマート農業は“斧を研ぐ”行為に相当します。

例えば、

  • 水田の水管理を遠隔操作できるシステムでは、水管理時間を7~8割削減。

  • 急斜面の草刈り用ロボットは、疲労度を9割減、作業時間を8割削減。

  • AIを活用した栽培管理支援システムでは、収量15%増・肥料コスト20%減を同時に達成。

こうした事例はすでに各地で報告されています。つまり「斧を研げば、これほど作業が変わる」ことは証明済みなのです。

にもかかわらず、多くの農家が導入をためらうのは、「斧を研ぐ暇がない」ジレンマと同じ。初期投資の負担、新しい技術を学ぶ時間や情報不足──こうした外的要因が背中を押すどころか重しになっています。

感想③ 誰が“研ぐ時間”をつくるのか

ここで重要なのは、斧を研ぐ時間を確保するのは農家一人の責任ではない、という点です。

  • 行政は、補助金や衛星利用などを含め、実証から普及まで切れ目ない支援策を整えています。

  • JAや普及員は、導入モデルの提示や共同利用の仕組みをつくることで、農家の負担を減らせます。

  • 企業やスタートアップは、ロボットのレンタルやデータ分析サービスなど、初期投資を抑えつつ使える仕組みを提供し始めています。

つまり「斧を研ぐ時間」を農家に与えるのは、周囲の仕組み全体の課題なのです。

Forbesの記事は、農家が直面する現実を突きつけると同時に、日本農業が「きこりのジレンマ」に陥っていることを改めて示しました。

スマート農業は、単なる効率化ツールではなく、“斧を研ぐ行為”そのもの。労力軽減やコスト削減だけでなく、農業を「かっこよく、成長できて、しっかり稼げる」仕事へと転換する可能性を秘めています。

今こそ、農家が孤軍奮闘するのではなく、地域・行政・企業が一体となり、研ぐ時間を確保する仕組みを整えるべきです。農業の未来は、斧を研ぐかどうかにかかっています。



 
 
 

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