🌏 世界の農業ルールづくりに参画 ― ISO/TC347と日本の挑戦
- Tomoyuki Watanabe
- 9月14日
- 読了時間: 3分

1. ISO/TC347とは何か?
2023年10月にISO(国際標準化機構)に設立された ISO/TC347(データ駆動型アグリフードシステム) は、農業から食品消費までのサプライチェーン全体を対象に、データに基づいた意思決定を可能にする国際規格 を策定する場です。
従来の「農業機械の規格」や「食品の規格」を超え、
アグリセマンティクス(用語・語彙の統一)
持続可能性モデル
家畜データ管理
温室・都市農業のデータ管理など幅広いテーマを包含しています。
2. なぜ重要か?
この標準化が意味するのは、世界の農業データの共通言語化です。規格が整備されると、
センサーや農機メーカーが共通のフォーマットでデータを扱える
食品トレーサビリティが国際的に統一される
サプライチェーン全体の効率化が進むといった効果が期待されます。
逆に言えば、日本が議論に参加せず「ルールが外から押し付けられる」状況になると、国内企業や農業者が不利になるリスクがあります。
3. 日本の参画体制
日本では農林水産省基準認証室(JAS室)が国内審議団体となり、一般財団法人日本規格協会(JSA)が事務局を担当。利害関係者を集めた「国内審議委員会」を設置し、国際議論に意見を反映させています。
そして今回、私自身(スマートアグリコンサルタンツ合同会社 代表 渡邊智之)も ISO/TC347調査委員会の委員 に就任しました。スマート農業分野の現場知見を国際標準の場に届ける役割を担います。
4. 今後の展望
ISO/TC347は現在、アドホックグループ(AHG)やアドバイザリグループ(AG)で個別テーマを検討中です。例えば、
温室・制御環境農業の自動化(韓国主導)
統合的病害虫管理(中国主導)
家畜活動のデータ管理(ノルウェー主導)などが議題に上がっています。
2025年以降は本格的な規格開発フェーズに入り、日本の立場をしっかり主張することが不可欠です。
5. 専門家としての視点
私が注目しているのは以下の点です:
「現場の使いやすさ」を誰が担保するのか? 規格は技術者や研究者が中心になりがちですが、農業者が日常的に活用できなければ意味がありません。
「データの主権」をどう守るのか? 農業者のデータが一方的に企業に吸い上げられるのではなく、公正なルールづくりが求められます。
「日本の強み」をどう国際標準に反映するか? 例えば、精密農業、果樹園芸の知見、食品トレーサビリティの仕組みなど、日本独自の強みを活かす戦略が必要です。
✍️ まとめ
ISO/TC347は単なる技術規格づくりではなく、世界の農業・食のデータルールを決める場です。ここでの議論に日本がどれだけ積極的に関与できるかが、農業の国際競争力を左右します。
スマート農業を推進する立場として、今後も現場の声を国際標準に届け、日本農業の未来に貢献していきたいと考えています。 📌 関連リンク・農林水産省:ISO/TC347(スマート農業国際標準化)https://www.maff.go.jp/j/jas/ISO_detail.html
・ISO公式サイト:Smart Farming – Data-driven agrifood systems







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