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スマート農業は「ロボット」ではなく「経営戦略」である── 山梨県立農林大学校 講義レポートから見えた、若き農業者たちの“本質的な気づき”

先日、山梨県立農林大学校にて「有機農業及び先端技術特別講座(ICT研修)」の講師を務めました。

講義後、養成科1年の学生28名全員から提出された研修レポートを拝見し、強い手応えを感じました。そこに書かれていたのは、「新しい技術はすごい」という表層的な感想ではありません。農業を“経営”としてどう成立させ、どう守り、どう次世代につなぐかという、本質的な問いでした。

本稿では、学生たちのレポートから浮かび上がった「次世代農業者が捉えるスマート農業のリアル」を、専門家の視点で整理します。


1. スマート農業は「ハイテク」ではなく「課題解決の手段」

講義前、多くの学生がスマート農業に対して抱いていたのは、

  • ロボット・AI・ドローンといった最先端技術

  • 大規模法人向けの高コストな仕組み

  • 自分たちにはまだ早い世界

というイメージでした。

しかし講義後のレポートでは、その認識が明確に変化しています。

  • 「ICTは目的ではなく、課題解決のための手段」

  • 「経営のリスクを抑え、収益を最大化するための考え方」

  • 「自分たちの農業を説明できるようにする道具」

学生たちは、スマート農業を**“自動化の話”ではなく、“経営判断の質を高める仕組み”**として再定義しました。

これは極めて重要な転換です。技術導入ありきではなく、「どう経営に活かすか」を起点に思考できている。ここに、次世代農業の可能性を感じます。


2. キーワードは「情報武装」──経営と自分を守るために

今回のレポートで、特に印象的だった概念が**「情報武装」**です。

学生たちは、なぜ農業にデータが必要なのかを、単なる効率化ではなくリスク管理の視点で捉えていました。

  • 「問題が起きたとき、記録がなければ農家が全責任を負う」

  • 「安価な輸入農産物と戦うには、品質をデータで証明する必要がある」

  • 「情報を持つことが、生産者を守る盾になる」

農業は自然条件に左右される産業ですが、トラブル時に作業履歴・管理記録・環境データがあるかどうかで、生産者の立場は大きく変わります。

学生たちは、GAPやトレーサビリティを「制度」ではなく「自分を守る仕組み」として理解していました。


3. 「勘と経験」を“知的資産”として残すという発想

「農業技術の知的財産化」というテーマに対する反応も、非常に成熟していました。

  • 「匠の技術は、属人化すると継承できない」

  • 「感覚で行っていた管理を、データで再現できるようにする」

  • 「データは次世代農業者にとっての教科書になる」

熟練農家の勘と経験は、極めて価値の高い資産です。しかし、それが個人の中に閉じてしまえば、引退や事故とともに失われるリスクを孕みます。

学生たちは、「経験 × データ」による品質の再現性と安定性こそが、スマート農業の核心だと捉えていました。

彼らが描くスマートファーマー像は明確です。

「機械を使える人」ではなく、データと経験を照らし合わせ、収益と品質の最適解を判断できる人」

4. 描かれていたのは「現実的な最初の一歩」

将来、自分の農業でICTをどう活用したいか。学生たちの回答は、驚くほど地に足のついたものでした。

  • 作業記録のデジタル化手書きや写真管理から脱却し、翌年の改善につなげたい

  • 環境モニタリングハウスや果樹園での温度・環境管理を遠隔で把握

  • 労働負荷の軽減アシストスーツやドローンによる省力化

いきなりAIや完全自動化を目指すのではない。「明日からできる一歩」としてICTを捉えている点に、強い現実感があります。


結論:技術に使われるな。技術を“経営に使え”

今回の講義と28名分のレポートを通じて、確信したことがあります。

スマート農業の本質は、技術ではない。それを使って“考える力”にこそある。

学生たちは、「楽をするため」だけにICTを使おうとしていません。より良いものを作り、正当な対価を得て、農業を持続可能な産業として次世代につなぐために、技術が必要だと理解していました。

山梨県立農林大学校の学生たちが、データと情熱を武器にした真のスマートファーマーとして現場に立つ日を、今から楽しみにしています。



 
 
 

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