top of page
検索

農業と再エネの未来像― ソーラーパネルの下で稲を育て、田んぼの水管理でCO₂を減らす時代へ ―

農業が担う“脱炭素社会”の主役機能

カーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの排出と吸収を実質ゼロにする社会の実現に向けて、日本の農業も確実に転換期を迎えています。

この文脈で今、二つの技術が注目されています。

1)太陽光発電で“電気を生む農地”へ

株式会社クボタは、農地に太陽光パネルを設置して農業と発電を両立する「営農型太陽光発電」を本格展開。筑波工場では約5MWを稼働させ、2025年からはさらに15MWの新規プロジェクトが始動予定です。これにより、年間1万トン以上のCO₂排出を削減しつつ、農業の生産性も両立。農地を再生可能エネルギー供給源として活用する先進モデルとなっています。 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/05052/?ST=msb

2)水管理で“見えない温室効果ガス”を抑制

一方、ファーガー株式会社が開発・提供する「中干し支援IoTソリューション」も、脱炭素農業の実現に向けた重要なアプローチです。

水田は、栽培中に多くの**メタンガス(CH₄)**を発生させることが知られていますが、その排出を抑える鍵が「中干し」という工程です。これは稲作の途中で水田を一時的に乾かすことで、メタンの発生源となる嫌気性菌の活動を抑制するという環境技術です。

ファーガーのシステムでは、圃場ごとの水位データと気象データを連動させ、中干しの最適なタイミングと期間を農業者に提示。収量・品質を落とさずに環境負荷を抑えられるため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のガイドラインにも準拠した「低炭素農法」として評価され始めています。 https://faeger.company/for_agriculture/

営農型再エネ×IoT水管理=次世代脱炭素農業モデル

クボタの営農型太陽光発電と、ファーガーのスマート中干し管理技術は、一見別分野のように見えますが、実は次のような点で同じ“土俵”に立つ脱炭素農業テクノロジーです。

分野

技術

貢献内容

再エネ導入

クボタ 営農型太陽光

農地から電力を生み、CO₂削減と地域電源確保を両立

水田管理

ファーガー 中干し支援IoT

メタン排出削減による地球温暖化防止、栽培品質も維持

このように、農業が発電所にもなり、温室効果ガスの抑制源にもなるという時代が、すでに現実のものとして動き出しているのです。

スマート農業の未来は「複合価値の創出」へ

スマート農業は、単なる作業の省力化やデータ活用にとどまらず、「地球環境・地域経済・エネルギー・食料安全保障」を同時に支える多層的な価値創出の場へと進化しています。

  • ソーラーパネルの下で作物を育て、

  • 圃場の水位をセンサーで管理し、

  • AIで作付けや収量を最適化し、

  • その成果を可視化して地域社会に還元する。

これが次世代の“稼げて感動がある”農業の姿です。

終わりに|脱炭素は「都市の話」ではない。農業の話だ。

カーボンニュートラルの主戦場は、都市部のEV化や建築物の断熱化だけではありません。むしろ、日本全国の田畑や水田が、“CO₂の貯蔵庫”にもなれば“発電所”にもなる可能性を秘めています。

今後は、

  • 営農型発電の規制緩和、

  • 水管理IoTへの補助制度、

  • 農業者へのカーボンインセンティブ設計

といった総合的な環境整備と、農業経営者のマインド変革が重要となります。

私は、こうした技術と制度の接続によって、「日本型脱炭素農業」が世界へ誇れるモデルになることを強く期待しています。

🟢 農業を、かっこよく稼げて感動があるものに。農業が「エネルギー」「環境」「データ」の拠点となる未来へ。今こそ“農”をアップデートする時です。


 
 
 

Comments


bottom of page