top of page
検索

点群データが農業を変える。スマート農業の新しい“立体的”視点とは?


こんにちは。 渡邊智之です。

ドローンやLiDARを活用して取得される点群データ(Point Cloud) 土木・建築の分野ではおなじみのこの技術が、今、農業の現場でも静かに革命を起こし始めています。

本記事では、「点群データを農業にどう活かすのか?」というテーマで、最新のユースケースと導入事例、今後の展望について立体的に読み解いていきます。

■ 点群データって何?

「点群データ」とは、LiDARなどの3Dスキャン技術で取得される、空間上の“点”の集合体のこと。各点にはXYZ座標(位置情報)が付与されており、これを組み合わせることで建物や地形、作物などの立体形状をデジタル空間上に再現できます。

農業分野では、ドローン搭載LiDARやGNSS、RTKなどのセンサーを用い、高精度な3Dマップの作成が可能になりつつあります。例えば、スマートリンク北海道が提供する「くみき」では、ドローンで撮影した画像をクラウドにアップロードするだけで、オルソ画像・DSM・点群データの自動生成が可能です。

このように、農業に点群を取り入れることで、「目に見えなかった問題」や「気づけなかった構造」が“見える化”されていくのです。

■ 点群データ×農業——7つの注目ユースケース

1. 圃場整備の高度化:高低差・傾斜の精密把握

ドローンで取得した点群から、圃場の微細な高低差や傾斜を可視化し、均平化設計や排水路の最適化に活用。北海道の組合では、GNSSレベラーと自動操舵システムを組み合わせ、測位誤差±2cmの精密作業を実現。作業時間の短縮や人為的なばらつきの低減が報告されています。


2. 果樹園・樹木の個体管理と病害予察

UAVとLiDARを活用し、樹木の位置・樹高・樹冠を個体ベースで管理。北海道大学では、ドローンと高精度3D地図を活用した森林管理研究が進行中です。

また、病害虫リスクには、マルチスペクトルカメラや小型分光器での病変早期検知技術が登場。スペクトル情報+AI診断による病害予察と防除支援が現実味を帯びてきています。


3. 生育量と収穫予測の「見える化」

点群データによって、キャベツやレタスなどの生育量(体積)を推定し、可変施肥や収穫タイミングの判断材料に。

たとえば、DJIのMavic 3Mや衛星リモートセンシング「天晴れ」では、NDVIなどの指標を用いて、生育診断・収穫予測・処方マップの自動生成が可能。CropSpecのようなレーザー式センサーも夜間対応で高精度化が進んでいます。


4. ハウス内3D化による機器配置とメンテ最適化

施設園芸では、ハウス構造そのものを点群で再現することで、機器配置やメンテナンス計画の最適化が可能に。

環境制御システム「ももことあやか」やプロファインダーによるセンシングと組み合わせれば、空間・環境の両面で“スマートな設計”が実現します。


5. 農地の境界・農業インフラの立体可視化

WAGRIの地番データと点群を統合すれば、用水路・棚田の段差などを3Dで視覚化可能。→ 農業委員会や地権者との調整、農地転用時の合意形成が格段にスムーズになります。


6. スマート農機の“視覚”としての点群

自動走行農機には、LiDAR・カメラ・GNSSを搭載し、障害物や斜面をリアルタイムで認識。北海道大学×NTTの実証では、2Dライダー+AIが障害物検知と緊急停止制御を実現しています。

→ 点群データは、ロボット農機の“眼”として安全性と精密制御の基盤に。


7. 災害後の復旧・被害証明資料としての3D記録

豪雨や土砂災害後、農地をスキャンしてBefore/Afterを比較。→ 補助金申請や保険適用のための客観的証拠資料となる可能性が高く、今後の実装が期待されます。

■ 「技術」だけでは足りない。「目的」との接続がカギ

点群データはあくまで“ツール”です。それをどう活かすかは、現場の課題や目的との結びつきがすべてです。

  • 収量ムラを減らしたい

  • 生育を可視化したい

  • 自動化したい

  • 境界を明確にしたい

このような現場の声とデータ活用が噛み合ったとき、初めて“農業DX”が機能します。

■ 今後の課題と展望

項目

懸念点

対応の方向性

機材コスト

LiDAR付きドローンは数十〜数百万円。

普及に伴い3次元カメラ等の低価格化が進行中。

人材不足

点群の解析にはスキルが必要。

スマート農業教育支援や農高との連携が鍵。

利活用翻訳

現場が「どう使えばいいか分からない」。

農業DX推進会議やJA主導の地域展開が重要。

■ まとめ:農業は“立体視”で進化する

気候変動、担い手不足、資材高騰——農業を取り巻く課題は複雑です。そんな中、2Dの思考から3Dへと発想を転換することで、見えなかった課題が見え、対策も立体的になる

点群データは、「農業の未来を3Dで考える」ためのレンズ。これからも、現場に根ざしたテクノロジーの実装を通じて、農業をかっこよく、稼げて、感動があるものにしていきましょう。

 
 
 

Comments


bottom of page