手探りから始まった山口のスマート農業:現場が証明する“見える化”の力
- Tomoyuki Watanabe
- 6月14日
- 読了時間: 4分

みなさん、こんにちは。渡邊智之です。
今回は、山口県内でスマート農業に取り組む現場の声と実践をもとに、
技術導入のリアリティやそこから得られる示唆を共有いたします。
■ 導入の背景:人手不足と継承困難という現実
山口県の農業現場でも深刻なのは、担い手不足と高齢化です。全国的にも農業就業人口は2030年には現在の半数に、平均年齢は68歳超に達するとされ、地域農業の存続が危機的な状況にあります。
特に70ha規模の大規模農業法人では、既存の労働力での対応が困難になり、「面積を維持するには機械化しかない」という判断が現場で下されました。
最初に導入されたのは農薬散布ドローン。山口県ではこれを活用したドローン防除が制度化されており、作業時間の大幅削減と均一な散布による資材コストの抑制が報告されています。AIによるピンポイント散布では、農薬使用量を最大1/10に削減した先進事例も登場しています。
■ 山口の農業を支えるスマート技術の全体像
山口県の農業現場では、以下の7領域でスマート技術の導入が進んでいます:
① 農薬散布ドローン
自動飛行により中山間地でも均一散布が可能。人手と労力を省き、作業の安全性も向上。
② 可変施肥田植機
地力のバラつきに応じた施肥ができ、倒伏リスクや収量低下を防止。収量4%向上のデータも。
③ リモコン草刈機・除草ボート
傾斜地や高温環境でも安全作業を実現。作業時間を最大80%削減。加えて、太陽光で稼働する抑草ロボットは無農薬で雑草抑制が可能。
④ AI×衛星画像を活用した栽培管理支援システム
生育予測、病害虫予測、最適施肥設計などを支援。データに基づいた判断が可能に。
⑤ 水位センサーと自動給排水システム
見回り不要。リアルタイムで水位・水温を確認し、給水も遠隔操作。時間と労力の大幅削減。
⑥ 収量コンバイン(自動計測)
収穫と同時に水分・タンパク含有量などを測定。圃場ごとの特性把握と翌年へのフィードバックに活用。
⑦ 作業可視化ツール(ホワイトボード+LINE共有)
「誰が・どこで・何をやったか」を“見える化”。個人経営から組織農業への転換を支える基盤に。
これらの技術は、経験や勘に依存していた農業を、データと論理に基づいた意思決定へと進化させます。結果として、労働時間の短縮、品質の均一化、利益構造の明確化といった変革が生まれています。
■ 組織農業の時代:情報共有が生む新たな経営モデル
山口では農業法人や集落営農の枠組みが進み、協同によるスマート農機のシェアリングや作業の可視化が制度として整ってきました。
注目すべきは、スマホやタブレットの活用だけでなく、「ホワイトボード×LINE」という“アナログとデジタルの中間”から始めた実践です。情報共有は農業の効率化の要であり、記録の形式知化が後継者育成にもつながります。
AIやIoTはあくまで道具です。それを活かすのは人間の判断と現場感覚。このバランスが取れているのが、山口の強みだと感じました。
■ 成果:110%の収量向上は偶然ではない
中には、AIによる画像分析で生育傾向を捉え、翌年の施肥設計を最適化することで、収量を前年比110%にまで向上させた事例も報告されています。
これは単なる「導入してみた」だけでは到達できない成果です。導入後もデータを記録し、PDCAサイクルをまわし続けたからこそ得られた改善結果です。
■ DXの第一歩は“目的の明確化”
誤解されがちですが、スマート農業は「高価なロボットを買うこと」ではありません。現場では、無料アプリや簡単な記録ツールを使った“スモールスタート”が功を奏しています。
重要なのは「なぜ導入するのか」「何を改善したいのか」を明確にすること。補助金や税制優遇制度も数多く用意されていますが、それを有効活用できるかどうかは、現場が明確な目標を持っているかにかかっています。
■ スマート農業は“希望をつくる技術”へ
病害虫診断AI、作付シミュレーション、熟練技術の形式知化など、農業におけるAIの進化は加速しています。
「農業って、ゲームみたいで面白い」「結果がすぐ数字で見えるのがやる気につながる」
こうした現場の声が、農業を魅力的な産業へと変える原動力です。
スマート農業は、単なる効率化ではなく、“地域と人材の未来”を支える希望のインフラです。山口のような事例を、日本各地に広げていくことが今、求められています。
🌾 まとめ
スマート農業は人手不足・高齢化という構造課題に対する解決策。
技術導入の肝は「見える化」と「情報共有」。
スモールスタートが導入成功のカギ。
DXは手段であり、目的達成のための“知恵の道具”。
若者や新規就農者の参入促進にもつながる「農業の民主化」。
あなたの地域でも、スマート農業の第一歩を。まずは「見える化」から始めてみませんか?
ご希望があれば、補助金情報、導入支援、現地見学の手配などもサポートいたします。 お気軽にご相談ください。 ご参考
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