トマト収穫ロボットが変える農業の未来―「トクイテン」が挑む、完全自動化農場というフロンティア―
- Tomoyuki Watanabe
- 6月9日
- 読了時間: 3分

はじめに|課題解決から始まった農業ロボット開発
「えっ、水やりすら自動化されていないのか…」スタートアップ企業「トクイテン」の創業者が農家から受けた一言は、のちに日本の農業現場におけるロボティクス革命へとつながります。
岐阜県出身の技術者・起業家である代表は、過去にスタートアップを立ち上げて売却した経験を持ちながら、「本当に社会的意義のある課題」に挑むべく、2021年に農業ロボティクス企業を創業しました。
その目標はシンプルながら壮大です。「農業を、肉体労働から解放された、かっこよく稼げて感動がある産業に変える」こと。
トマトを選んだ理由|市場性と情熱
トクイテンが最初にターゲットに選んだのは、意外にも「ミニトマト」。 これは以下の2つの理由からです:
市場規模の大きさ:火災類野菜の中でもトマトは生産者・消費者ともに多く、最も課題が集中している作物。
個人的嗜好:代表自身が「好きな作物だからこそ、愛情を持って育てられる」と判断。
課題先進地としての農業現場と、ロボット開発のリアル
スマート農業ではよく語られる「自動化」ですが、現実には乗り越えるべき壁が無数にあります。トクイテンが取り組む収穫ロボット開発でも、次のような課題が明らかになりました。
農場は“毎日変化する環境”:畑は水・埃・凸凹・温度変化に富み、工場内のロボットとは全く異なる制御設計が必要。
柔らかく潰れやすい作物の扱い:トマトは同じ形状が一つとして存在せず、力の加減が難しいため、吸引機構やAI画像認識などの高度な制御が必須。
寒さには強く暑さに弱い:ロボットは低温に強い反面、夏場の高温はCPUやパーツにダメージを与える。
これらの困難に、代表と共同創業者(岐阜高専時代の仲間)は、「一度失敗し、ゼロベースでやり直す」覚悟で挑んでいます。
「売れる仕組み」も同時開発する現代農業スタートアップ
トクイテンの強みは、「技術」だけではありません。初年度、味は素晴らしくても「まったく売れなかった」経験から、流通・販売チャネルの開拓にも真正面から取り組んでいます。
地域密着の営業:百貨店やオーガニックスーパーへの売り込み、無料試食、子ども向けの配布など地道な試行錯誤。
マーケティング学習:年齢や顧客層に応じた品種・硬さ・パッケージサイズの最適化。
信頼の構築:バイヤーが求めるのは「味」だけでなく、「生産環境の清潔さ・安定供給体制・安全性」といったトータル品質。
次なる挑戦|“完全自動農場”と、他品目展開
現在のトマト収穫ロボットに加え、特意点は次のステージへ進もうとしています。
収穫後の全自動工程:運搬・選別・袋詰めまでを一貫自動化する次世代農場を設計中。
技術の他品目展開:トマトと同じ「ナス科」のピーマン、パプリカなどへの応用も検討中。
さらに「世界一の農業ロボットメーカーを目指す」という明確なビジョンを掲げ、研究者たちと連携しながら特許取得など知財戦略も進行中です。
私の視点からの評価と期待
トクイテンの取り組みは、単なる“スマート農業”に留まりません。以下の点で注目に値します:
高専・AI・ロボティクス人材の社会実装モデル
持続可能な有機農業×テクノロジーの融合
B2B(百貨店・ホテル)とB2C(地域)を両立する流通戦略
農業ロボットの国際競争力創出ポテンシャル
終わりに|“好き”が起点のイノベーションを日本農業に
トマトが好き。社会課題に挑みたい。誰かの役に立ちたい。そんなシンプルな動機が、今やロボティクスを用いた農業改革の起点となっています。
特意点の事例は、「農業×テクノロジー」の成功に必要な条件──課題への共感、現場との対話、技術と情熱の融合──を体現しています。
これからの農業DXにとって、重要な“得意点”になるかもしれません。
中京テレビNEWSより
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